投資、特に米国株に興味のある方は、分散投資や、アセットアロケーションといったことにも関心があるのではないかと思います。東証の用語集の「アセットアロケーション」にはこんなことが書いてあります。
資産運用といっても、大きな資金を運用する場合は(中略)個別銘柄から入るのではなく、まず、運用する資産を、「国内株式」・「国内債券」・「海外証券」・「不動産」・「現金等価資産」など資産クラス別にどのような割合で分配するかという意思決定があり、その後に、資産クラス毎に、銘柄の選定に入ります。
しかも、この二つは別々の意思決定であることが証明されています。 この課題を最初に実証的に整理したG.ブリンソンに依れば、トータル・パフォーマンスに占める「アセットアロケーション」の寄与は9割以上と言われていました。
アセットアロケーションが重要であることは直感的にも理解できるところですが、ではその礎となる、株、債券、不動産等個別の資産クラスにはどういうものがあり、どういったリスク・リターンの特徴があるのでしょうか。その疑問に対して網羅的に答えてくれるのが、The Investment Assets Handbookです。
著者のYoram Lustigは、AXA Investment Managersでのマルチアセットポートフォリオ(複数のアセットクラスを組み合わせたポートフォリオ)のファンドマネージャー。ポートフォリオに組み込むアセットは、明確な役割(インカムを生む、ヘッジする等)を担うべきであり、それが分からない場合はポートフォリオに入れるべきではないと著者は言います。
The Investment Assets Handbookでは、以下のアセットクラスについて、ポートフォリオに組み込む理由やリスク、過去のデータに基づくリターン・リスク、他アセットクラスとの相関やリターン・リスクの比較について図表も多用しながら説明されています。これで少しはなんとなくの分散投資からの卒業に近づけそうです。著者は、単に色々なアセットを組み合わせるだけでは多様な(varied)ポートフォリオであって、分散された(diversified)ポートフォリオとするには、各アセットの特性を理解して、完全相関しないものを組み合わせることがキーとなる、という耳の痛いことを言っています。
まさにアセットクラスのバイブルとも言えるよく出来た本で、是非日本語版の出版もして欲しいところですが、原著で良いという方はKindle版・Kobo版ともに入手可能です。
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Kobo版はこちら。The Investment Assets Handbook