
そもそもなぜ日銀は銀行に金利を支払う?
では、そもそも、銀行が日銀に持つ当座預金にはなぜ金利が付いていたのでしょうか?現代ビジネスのこの記事が言うように、これは銀行への小遣いだったのでしょうか?
これについては、先日のベン・バーナンキのブログが参考になります。FRBも同様に、銀行がFRBに持つリザーブ(預金)に金利を支払っています。
FRBはなぜ米銀に金利を支払うのか?
米国FRBの政策金利はfederal funds rateで、銀行がFRBに持つリザーブを使って、銀行間で一日貸し借りする際の金利です。
以前はFRBは、銀行全体がFRBに持つリザーブの総額を、銀行との国債売買を通じてコントロールすることによって、federal funds rateをコントロールしていました。リザーブの総量が減れば、リザーブは希少となり、federal funds rateが上がる、という構図です。
ところが、2008年以降のQEによりリザーブ総額が非常に大きくなったため、利上げをしようとしても、リザーブを少し減らしたところで、リザーブ全体としては余っているため、federal funds rateも上がらないという事態になります。
こうした事態を避けるため、2008年以降、FRBはリザーブに金利を付与することができるようになりました。昨年12月の利上げ決定の際には、FRBはリザーブの金利を0.25%から0.50%に上げました。これにより、0.50%以上の金利でなければ、他銀行に貸さずにリザーブに置いておくようになり、federal funds rateが0.50%に誘導されます。つまり、FRBリザーブの金利は、federal funds rateの下限値として機能します。
リザーブに金利が付くから、銀行はお金を寝かせている?
FRBリザーブに置いておくだけで金利が得られるために、銀行は企業への貸出を行わないというよくある批判に対しても、ベン・バーナンキはコメントしています。
例えばリザーブの金利が0.50%だとすると、それにより影響を受けるのは、リスクを考慮したうえで0.50%のリターンが得られないローンのみであり、それは銀行貸し出し全体の非常にわずかな割合に過ぎないとの主張です。
リスクを考慮した上で0.50%以上のリターンが得られるローンについては、リザーブ金利を得るよりもローン貸出の方が有利なため、貸し出しが行われるはずです。0.50%のリターンが得られないようなローンについては、そのような貸し出しをするよりは、FRBリザーブに置いておくインセンティブがあるわけです。
つまり、リザーブとして置いておき、銀行が企業への貸し出しを行わないのは、単に良いローン案件が無いということです。
こう考えると、日銀が当座預金をマイナス金利にしたところで、あまり効果は無さそうに思われます。