2017年3月4日

Target2 ドイツの隠れたリスクが2012年ギリシャ危機以来の高水準

Target2というユーロ参加国間の決済システムがあります。

Target2とは


Target2について、概要が日立総合計画研究所のサイトに簡単にまとめられています。
「TARGET」とは「Trans-European Automated Real-time Gross Settlement Express Transfer System」の略称で、欧州中央銀行(European Central Bank、以下ECB)とユーロ参加17カ国の中央銀行で構成されるユーロシステムが所有、運営する資金決済システムです。

Target2による決済


日本国内の銀行間決済の場合は、日本の銀行が日銀に持つ当座預金を通じて行います。A銀行に口座を持つX社が、B銀行に口座を持つY社に送金する際、X社はA銀行に自社の口座残高を送金額分減らし、B銀行のY社口座の残高を同額分増やす依頼を出します。A銀行は、日銀にあるA銀行の当座預金を減らし、B銀行の当座預金を増やすことでB銀行に送金し、B銀行はY社の口座残高を増やして、送金完了。

Target2によるユーロ参加国間の決済も似たような仕組みですが、ECBを通じて実際に送金をせずに債権・債務を積み上げる形になります。
スペインの輸入企業S社がドイツの輸出企業G社から製品を輸入し、TARGET2を通じて代金1億ユーロを送金するケースを考えてみます。S社の取引金融機関であるスペイン国内の銀行は、S社からの送金依頼に基づき、G社の取引金融機関であるドイツ国内の銀行に送金します。この際、TARGET2を通じて決済が行われると、スペインの中央銀行であるスペイン国立銀行に1億ユーロの債務が、ドイツの中央銀行であるドイツ連邦銀行に1億ユーロの債権が計上されます。すなわち、いったんスペイン国立銀行はドイツ連邦銀行に債務を負う形になります。

Target2残高




Target2の2017年1月末残高は上の通りで、ドイツ中央銀行はECBに対して約800ビリオンユーロ(97兆円)の債権を持ち、逆に、イタリアは約360ビリオンユーロ(44兆円)、スペインは約350ビリオンユーロ(42兆円)、ECBに対して債務を負っている状況です。

仮にイタリアがユーロを離脱、この債務をデフォルトした場合は、ECBが360ビリオンユーロを回収できないことになり、その影響はECBへの出資比率が一番大きいドイツが最も受けることになります。それがTarget2残高がドイツの隠れたリスクと言われる理由です。

Target2バランスの推移


ECBに対する債権国上位6ヶ国(ドイツ、ルクセンブルク、オランダ、フィンランド、アイルランド、ベルギー)の、Target2バランス(債権残高)の推移は以下の通りで、1,000ビリオンユーロを超え、2012年のギリシャ危機以来の高い水準になっています。


逆に、ECBに対する債務国上位6ヶ国(イタリア、スペイン、ポルトガル、ギリシャ、オーストリア、フランス)の、債務残高推移は以下の通り。


このままTarget2が拡大することは持続可能なのか、新たなユーロ危機につながるのか、気がかりです。

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